「世界で最も影響力のあるワイン評論家」。自ら発行するニュース・レター「ワイン・アドヴォケイト」は、広告や写真を載せず、中立な立場からの「消費者のためのワイン評論」を標榜してきた。現在のワイン業界では、彼がワインを評価する点数を「パーカー・ポイント」と言い、彼が高得点を与え、良いコメントを付けるワインは、たちまち値段がはね上る。
(無名で安価だったワインが、パーカーによって見出され、高い評価を受け、一夜にして、高価で有名になったワインを「シンデレラ・ワイン」と言う。生産量が少ないから入手が難しい。例えは、ボルドー・サンテミリオンの「ヴァランドロー」や「ラ・モンドット」)
パーカーは言う「私がこの20年間ずっと取り組んできた課題は 「偉大なワインとは何か」と言うこと。ワイン批評家の間で、「ワインティスティングとは主観的なものである」としばしば言われる。私はこれにある程度同意するが、ある程度同意しない。素晴らしいワインというものは素晴らしい音楽や絵画と一緒で、その素晴らしさというものは常にそこに一定のものがあると考えているからだ。偉大なワインについていえば、その味わいは常にインターナショナルなものであり、その定義というものは世界中どこでも同じだと私は考える」と。
消費者運動家ラルフ・ネイダーに強い影響を受け、同じ弁護士からワイン評論家になったパーカーの点数によるワイン評価は、ワイン文化の希薄なアメリカ社会で、たちまち評判になる。パーカーの活躍は、アメリカのワイン市場が広がり定着していく時期と期を一にする。
現在、50~100点を付ける点数評価の是非や、彼自身の好むワインのスタイルが濃厚・過熟で力強いものに偏向していて、画一的ワイン生産を拡げているなどとの非難も受けている。
しかし、アメリカは、いまや世界最大のワイン市場であるから、パーカーの評価は、ワイン業界に強いインパクトを与え続けていて、その動向は常に注目されている。
ボルドーは、歴史的に常に海外の市場によって進歩・発展してきた。パーカーの出現によって、変革する現在のボルドーの姿を、読み物として面白くまとめ、異色なワイン・ブックが、「スキャンダラスなボルドーワイン」である。
また、フランスで大ヒットし、日本でもワイン愛好家に好評のドギュメンタリー映画「モンドヴィーノ」は、パーカーとは異なるワイン観を持つ生産者の姿をも写しだし、ワインが一様でないように生産者も一様でない事を語っている。
2014年、映画「モンドヴィーノ」の監督・ジョナサン・ノシターは、「ワインの真実」と言う本を出版した。ロバート・パーカーとは異なるワイン観がはっきり語られていて、大変興味深いWineBookの一つである。