BORDEAUX Médoc Crus Classés

 

ワイン評論の巨人-Robert Parker (ロバート・パーカー)

「世界で最も影響力のあるワイン評論家」。自ら発行するニュース・レター「ワイン・アドヴォケイト」は、広告や写真を載せず、中立な立場からの「消費者のためのワイン評論」を標榜してきた。現在のワイン業界では、彼がワインを評価する点数を「パーカー・ポイント」と言い、彼が高得点を与え、良いコメントを付けるワインは、たちまち値段がはね上る。
(無名で安価だったワインが、パーカーによって見出され、高い評価を受け、一夜にして、高価で有名になったワインを「シンデレラ・ワイン」と言う。生産量が少ないから入手が難しい。例えは、ボルドー・サンテミリオンの「ヴァランドロー」や「ラ・モンドット」)

パーカーは言う「私がこの20年間ずっと取り組んできた課題は 「偉大なワインとは何か」と言うこと。ワイン批評家の間で、「ワインティスティングとは主観的なものである」としばしば言われる。私はこれにある程度同意するが、ある程度同意しない。素晴らしいワインというものは素晴らしい音楽や絵画と一緒で、その素晴らしさというものは常にそこに一定のものがあると考えているからだ。偉大なワインについていえば、その味わいは常にインターナショナルなものであり、その定義というものは世界中どこでも同じだと私は考える」と。

消費者運動家ラルフ・ネイダーに強い影響を受け、同じ弁護士からワイン評論家になったパーカーの点数によるワイン評価は、ワイン文化の希薄なアメリカ社会で、たちまち評判になる。パーカーの活躍は、アメリカのワイン市場が広がり定着していく時期と期を一にする。
現在、50~100点を付ける点数評価の是非や、彼自身の好むワインのスタイルが濃厚・過熟で力強いものに偏向していて、画一的ワイン生産を拡げているなどとの非難も受けている。
しかし、アメリカは、いまや世界最大のワイン市場であるから、パーカーの評価は、ワイン業界に強いインパクトを与え続けていて、その動向は常に注目されている。

ボルドーは、歴史的に常に海外の市場によって進歩・発展してきた。パーカーの出現によって、変革する現在のボルドーの姿を、読み物として面白くまとめ、異色なワイン・ブックが、「スキャンダラスなボルドーワイン」である。

また、フランスで大ヒットし、日本でもワイン愛好家に好評のドギュメンタリー映画「モンドヴィーノ」は、パーカーとは異なるワイン観を持つ生産者の姿をも写しだし、ワインが一様でないように生産者も一様でない事を語っている。
2014年、映画「モンドヴィーノ」の監督・ジョナサン・ノシターは、「ワインの真実」と言う本を出版した。ロバート・パーカーとは異なるワイン観がはっきり語られていて、大変興味深いWineBookの一つである。

 

 

Book : 「スキャンダラスなボルドーワイン」

本「スキャンダラスなボルドーワイン」
倣岸なブルジョワ貴族趣味のボルドーの真の姿は、なかなか見えない。が、その歴史をよく見れば、欲望と野心の渦巻く社会である事は想像できなくはない。
この本は、現在のボルドーの姿を、見事に活写した数少ない本の一つである。

ボルドー・ワインのマーケットは世界規模だから、パーカーの影響を含めて、ワイン業界の今日の姿が読み取れる。
原題は「ノーブル・ロット・・・ボルドーワイン革命(NOBLE ROT-A Bordeaux Wine Revolution)」

著者: William Echikson (ウイリアム・エチクソン)
アメリカ人シャナリスト。「ウォール・ストリート・ジャーナル」や「ビジネス・ウィーク」などの欧州特派員を歴任。著書には、「夜を照らす-1989年東欧革命」、「星に憑かれた男-三ツ星レストランシェフ・ベルナール・ロワソー」がある。

訳者: 立花峰夫
京都在住のワイン・ライター・翻訳者。2003年よりヴィノテーク誌専属ライター。内外のワイン雑誌に寄稿。訳書:「ほんとうのワイン(パトリック・マシューズ著)」、「ヴォーヌ=ロマネ伝説(ジャキー・リゴー著)」

刊:ヴィノテーク

Mondovino : 映画:「モンドヴィーノ-」 

DVD「モンドヴィーノ-Mondovino」
映画は2004年カンヌ国際映画祭に出品された後、各国のワイン・メディアで議論を起こした。評価はワイン消費国ほど高く、仏フィガロ紙は「人間賛歌」と、米バラエティ紙は「ワインを超えた普遍的テーマを掘り下げた」と評した。

表面的には、ワインの味の画一化を広める「グローバリゼーション勢力」と、畑の個性を大切にワインを手造りする「テロワール主義者」の対決の図式で物語は展開される。
ボルドー、ブルゴーニュ、ナパ、トスカーナ、アルゼンチンなど、世界各地のワイン生産者が登場する。一筋縄ではいかない面々ばかり。
ワイン評論の巨人・ロバート・パーカー、パーカーと主義を同じくする、「フライング・ワインメーカー」と言われ世界を飛び回るワイン・コンサルタント・ミッシェル・ロラン、アメリカ随一の巨大ワイン企業、そして小さな畑を代々守り抜き、一篇の詩のようなワインを造るブドウ生産者たち・・・・・。
そこには、ワインと人生を共にする人々の、エキサイティングでスリリングな、何とも味わい深い人間ドラマが見え隠れする。ワイン愛好家必見のドギュメンタリ映画。

監督のジョナサン・ノシターは、2005年9月、日本公開に当り来日した際、東京都内の百貨店ワイン売場を覗き、パーカー・ポイントも表示してあるのを見て、「米国のワインショップのように、ボトルの首にパーカー・ポイントの札をぶら下げてないだけましだ」と語り、続けて「首からパーカー・ポイントのホルダーを下げるのはひどい。ワインとワイン文明に対する侮辱だよ。 女性が首から「90点」という札を下げて歩いているのを見たらどう思う?」と語ったと言う。

DVD販売:東北新社

 

本「ワインの真実」
パーカーに批判的なノシター監督が、2014年6月本を出した。
「本書を読むと、次に飲むワインの味が変わる・・・」(NYタイムズ紙)と言う。一読お勧めのWineBookの一つ。

ワインの真実・・・本当に美味しいワインとは?」 原題:Le goût et le pouvoir

著者:ジョナサン・ノシター
訳者:加藤雅郁
出版:(株)出版社

 

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