この気象と土壌の違いで、ワインの特徴も大きくライン西部とは異なる。
特にモーゼルなどの湿った酸味に対し、乾燥した酸味を感じさせる。品種にしても西部の主要品種は、リースリングだが、フランケンではむしろシルヴァーナの方が適していて、その堂々たる性格を顕著に表わす。
ドイツワインは、一般に女性に例えられるのに対し、フランケンワインだけは常に男性的とされている。
香りは弱いが、コクが強く、引き締まった辛口の土味が特徴で、シルヴァーナの上物はフランスのシャブリの上物に十分対抗しうる。
ブドウ畑は、現在約6,000haに及んでいるが、多くは小農達の零細農園である。従って、農業協同組合が力強い指導力を発揮しているが、旧貴族と修道院に基づく慈善協会によるワイン造りが,今日まで本命を保っている。
うねうねと曲がりくねるマイン川とその支流の流れが、四角形や三角形を作って流れているので、ビライヒも三角四角の形を名乗っている。この地域は3つのベライヒからなる。
中流のMaindreieck〈 マインドライエック- 三角地区〉には名だたる銘醸地があり、畑は分厚い貝殻石灰岩土壌の上にある。
その中心の町・ヴュルツブルクは、有名なブドウ畑「Steinーシュタイン」の故郷。古くからフランケンワインの総称として「シュタインワイン」と呼ばれて来たことは、ここからきている。
ヴュルツブルグのレジデンツ宮殿の真下は、ホーフケラーライ醸造所のケラー(地下蔵)になっており、ドイツでもっとも美しいケラー(地下蔵)の一つと言われている。マイン川を挟んでその対岸には、有名な畑(シュロスベルグとインネレ・ライステ)に囲まれた要塞・マリーエンベルグが眺められる。
ヴュルツブルグは中世の香り高い町々を巡る「ロマンチック街道」の北の出発点でもある。
*フランケンに属するもう一つの、Bayerischer Bodensee〈 バイエリッシャー・ボーデンゼー 〉と言うベライヒがある。飛び地の小地区で、ボーデン湖の北岸東部にある。(Baden参照)
フランケン地方のワインの守護聖人は聖キリアンである。毎年7月8日の聖キリアンの祭が盛大に行なわれ、醸造業者や農民が豊作を祈念する。フランケン地方のブドウ栽培は、古代ローマ人から受け継いだのではなく、アイルランド出身のこのキリアン伝道師に教化され始まった。
「クロスター(修道院)なくしてフランケンはない」と言われる程修道院や教会が数多い。キリスト教のシンボルとしてブドの木や実が、いたる所でよく見かけられることでも、この地のワイン造りに教会・修道院の影響が色濃く残っていることが良くわかる。
フランスのブルゴーニュの葡萄栽培の歴史的背景に似たものを持っているのがフランケンだと言えるのではないかと思われる。
(ドイツワインの歴史を参照されたし)