バーデン(Baden)は、ドイツの13のワイン生産地の中で最南端に位置し、北はハイデルベルグから南はボーデン湖までライン河沿いに細長く続く地域。
ブドウ畑は約15,500haで、その規模はドイツで3番目。第二次大戦後、いち早くブドウ栽培と醸造技術の近代化に成功した地域。殆どが国営や農協の醸造所でワインは造られている。
気候はドイツの13のワイン生産地域の中では概して大変暖かい。そのためEUが定めたワイン生産地気象区分の、
Bゾーン(フランスのアルザス、サヴォワ、ロワール等と同じ)に唯一属している。
畑は、南北約400kmに渡って細長く続く地域のため、気候、土壌の性格は非常に異なりバーデンワインの特徴を一口に言うのは不可能である。
北から、ベライヒを追って言えば、
マイン河の支流タウバー川沿いにあるから、地理的にはフランケン地方である。従って、フランケン同様、大陸性気候の影響を受ける。石灰岩質の土壌で、主にミュラー・トゥルガウ種(約80%)、シルバーナー種で造られる。この地方は1803年までフランケン地方に属していたことから、現在もワインはボックスボイテル瓶に詰められることが許されている。
〈バーディッシェ・ベルクシュトラーセ & クライヒガウ〉
ライン河を挟んで、ファルツの東、北をヘツシェ・ベルクシュトラーセに接している。黄土、粘土質土壌で、主品種はリースリング、ルーレンダー、ヴァイスブルグンダー。酸味の強い、比較的軽いワインを造る。
1751年に造られた約23万ℓの貯蔵可能の大樽でも有名なハイデルベルク城はこの地区にある。
ライン河をはさみ、フランス・アルザス地方のストラスプールに対面している。北はローマ時代からの温泉地・バーデン・バーデンから南はオッフェンブルクにまで広がる。
花崗岩、片麻岩の風化土壌。南ないし南西に向いた傾斜面では、素晴らしいフレッシュでエレガントなリースリング種が育つ。他にはフルーティーでブーケの高いルーレンダ一種、スパイシーでこくのあるトラミーナ一種。そして全体の約3分の1を占めるシュペートブルグンダー種で力強い赤ワインを造る。
この赤ワインで、Affentaler(アッフェンターラー)と呼ばれるワインは、猿がしがみついたユーモラスな瓶に詰められている。
また、バーデン・バーデン郊外の、
・Neuweier(ノイヴアイテー)
・Umweg(ウムヴェーク)
・Varnhalt(ファルンハルト)
・Steinbach(シュタインバッハ)
の4つの村のワインは、フランケン地域のあのボックスボイテル瓶に詰められている。この地の昔の領主がフランケンの領主であった事で、例外的に認められでいる。
北はラール村から南はフライブルク市にかけてまたがる。黄土、片麻岩の風化土壌。ルーレンダーとシュペートブルグンダ一種が主品種。この2種類のブドウをを混ぜて造られるのが、
BadischRotgold(バーデイツシュ・ロートゴルト)で、
Rotling(ロートリンク)
と称される特産品。
ロゼワインのような色を呈するが、ルーレンダー種を使っているため、光にかざすと、ワイングラスの中でキラリと黄金の輝きを放つ。
〈カイザーシュトゥール & トゥーニベルク 〉
ベライヒ・プライスガウと独仏国境にはさまれてある。どちらもワイン栽培は傾斜面で営まれている。この両地区でバーデン・ワインの3分の1を占める。
Kaiserstuhl(カイザーシュトゥール)は、主に第3紀の火山活動による溶岩の風化土壌。黒色溶岩質だから、太陽熱を充分に吸収する。従って、出来るワインはミネラル分に富んだアルコール度の強い、非常に香り高いものとなる。主品種・シュペートブルグンダーで造るWeissherbst(ヴァイスヘルプスト)が地元の自慢。
また、シルヴァーナーやグラウブルグンダー種の<白>も香り豊。
は、黄土の土壌。黄土土壌においては、雨で土砂が流し去られることも頻繁で、その対策としてデラス方式の栽培形態が導入され、大規模な耕地整理が行われた。
ライン河は、バーゼルあたりで大きく進路を北に流れ下るが、バーゼルから上流に向かって真東にラインを遡ると、ヨーロッパ最大の湖の1つであるボーデン湖に入る。畑はこのボーデン湖の北岸にある。
北岸に位置するから、畑の傾斜面は南に向いている。ボーデン湖の恩恵を受け、海抜450mの所まで畑は延びている。
シュペートブルグンダーから造るWeissherbst(ヴァイスヘルプスト)は淡いピンク色のさっぱりした辛口。白ワインはミューラー・トゥルガー種から造られる。
*この地区の東端に、<Württemberg Bodensee><Bayerischer Bodensee>と言う2つのベライヒがある。共に、飛び地のベライヒで、前者はヴュルテンベルク、後者はフランケンに属する。