ライン河はこの地域でその河幅を一層広め、最大1.2kmに達する所もあり、この大河の恵みを十二分に受ける。又、背後のタウヌス(Taunus)山系によって荒々しい北風からも守られ、まれにみる好条件のブドウ畑が生み出され、昔から大銘醸ワインの数々を世に送り出して来た。ドイツにおける最も高級な歴史的ワイン産地がこのラインガウである。
黄土層、粘板質微粒砂土と風化した粘板岩から成る土壌は、リースリングには理想的で完璧なまでに熟成し、洗練された芳香と果実味豊な酸味を持つ最高品質の優雅なワインを生み出す。
栽培面積は、3,000ha。大きさから言うと、全11の栽培地域の8番目にあたり、殆どリースリングが栽培され、約80%。残り20%が、ミューラー・トゥルガーとシュペート・ブルグンダーと新品種である。
Johannisberg (ヨハニスベルク)が、唯一つのこの地域のベライヒ(地区)である。
*ワインブック GAULT MILLAUの「Guide to German Wines」の<The leading Producers>の5クラスあるものの中から3クラス以上のものをピック・アップした。
カール大帝が、対岸のインゲルハイム(Ingelheim)の王宮から、ラインガウを見やり、その雪解けの早さから、その暖かさを知り、葡萄栽培を奨励したと言う逸話は良く知られている。
確かに、陽の光がラインの川面に反射して、太陽の恵みを倍にも生かせるというラインガウの地形の特性を言い表しているが、これはあくまでも川岸から4~500m以内のことであって、それより奥の畑には及ばない。
もっと大切なことは、日中の太陽エネルギーを存分に吸収した河が、ぐっと気温が落ちる夜間から明け方に、徐々にその熱を発散し細かい霧となり、すっぼりとワイン畑を懐にいだき暖めるということにある。ブドウ畑がこの暖かい湿った霧に包まれるということは、又一方で貴腐ぶどうの発生をうながしてくれるのである。
この「貴腐と遅摘み」がヨハニスベルグ城で1775年に発見され事と、エーバーバッハ修道院でのカビネット(Cabinet)の語の使用は、ドイツワイン文化にとって画期的な出来事であった。(エーバーバッハでは修道院の幹部会つまり閣議(Cabinet)に供する秘蔵のワインにこの語を使った)
ラインガウにはカルタワイン(Charta Wein)と言う辛口ワインがある。
カルタとは、原点を意味し、ワインもその原点、つまりドイツワインの本来の姿へ返ろうというワイン刷新運動の中で、1984年、カルタ同盟(Charta Weingueter)という連合体が組織された。
このカルタ同盟が定めた規約は国のワイン法をさらに厳しくしたもので、Cabinetクラス相応以上の辛口ワイン造りを意図したものである。
ドイツは、甘口ワインの世界では、世界に冠たるトロッケンベーレンアウスレーゼ(Trockenbeerehauslese)やアイスワイン(Eiswein)があり、その評価は世界的に定まっている。これとのバランスをとる意味で、秀でた辛口ワイン造りを目指したものである。
近年の辛口趣向の高まりの中で、やせ細った辛口が乱発し始めた事への立派な制止役を果たし、最近国が定めた<クラッシク>や<セレクション>と言う辛口ワインのカテゴリーの基になったものと捉えられる。