トスカーナには、芸術の都・州都フィレンツェ、中世の文化都市シエナ、林立する塔の村サン・ジミニヤーノ、さらに、ルツカ、ピサなど、イタリアの誇る中世ルネッサンスの町が多くあり、人気の観光地である。
芸術や建物と共に、なだらかな丘陵に緑濃い糸杉、淡い緑のオリ-ブの木立、その間に白色の素朴な農家の家が点在し、牧歌的で美しいその風景は、誰もが思い浮かべるイタリアの田舎のイメージそのもので、葡萄畑もそのなだらかな丘陵に広がっている。
山岳地帯が25%、丘陵地帯が67%で、気候は寒暖の差が激しい大陸的気候。しかし、海岸寄りでは夏は涼しく、冬は温暖で安定した気候に恵まれている。トスカーナは日本では最も知名度の高い州であり、ピエモンテと共に、イタリアを代表する名醸地である。
DOCGとDOCの宝庫で、その中で、「キャンティ」は、日本でも早くからその名を知られ、イタリアを代表するワインのひとつである。
また、「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」、「ヴィノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノ」は、ピエモンテの「バローロ」・「バルパレスコ」同様に最も早くから高品質で知られた赤ワインである。
白ワインでは、伝統のヴェルナッチャ種で造る「ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノ」がある。
DOCGとDOCの詳細情報は、下記に記した。
かつては 黒葡萄のサンジョヴェーゼとカナイオーロ種に白葡萄のトレツビアーノとマルヴァジーア種を加えて造っていて,わらづとのフィアスコ瓶で売られていた。1980年代後半まで、量産銘柄と言われ、クオリティ・イメージも低く、褒められたワインではなかった。しかし、今では白葡萄が最小限度に抑えられ、サンジョヴェーゼ種がしばしば100%使用されるようになり,質的向上は大きく、そのイメージは払拭されつつある。
カベルネ・メルロー・ピノー・ネーロ種を少量使うことによって、ワインにフルーティーなまろみを足そうとしている生産者もいる。
ワインは熟成タイプと軽い若飲みタイプがある。とは言え、生産者も多く、DOCGに値しないワインも少なくない。ワインも多様で、その上価格の巾も大きいから、選択には苦労するワインである。
以下の7つの地域名をラベル表示する指定地域があって、若干上質と言われている。
主生産者
「キャンティ・クラッシコ」地域は、キャンティワインの心臓部にあって、フィレンツェとシエナの間の歴史的な地域で、全体の3割程度を造っている。
現在、クラッシコは80~100%サンジョヴェー種で造り,補助葡萄には伝統的なカナイオーロ、コロリーノ種、あるいは国際品種・カベルネ、メルロー種が使われる。白葡萄は使われていない。
「クラッシコ」は、並のキャンティより性格があり、また品質も一貫して良い。普通「クラッシコ」は、2~7年が飲み頃だが、イタリアの最良のワインと並ぶ優れた<リセルヴァ>の多くは、最良のヴィンテージであれば10年以上熟成してもなお進歩し続ける可能性がある。
古いキャンティ同盟の紋章である「黒鶏」で有名な生産者組織「ガッロ・ネロ協会」は、非常に積極的で、より良い葡萄によってワインの一層の高品質を保証し、現在のDOCGの改良に向けて活発な活動を続けている。
主生産者
Vin Santo del Chianti (ヴィン・サント デル キャンティ)
Vin Santo del Chianti Classico
(ヴィン・サント デル キャンティ クラッシコ)
「カルミニャーノ」は、キャンティのモンテアルバーノ地区に隣接している丘陵地帯である。土壌は石灰質泥土。ワインはサンジョヴェーゼ種を主体に、カナイオーロ種、カベルネ・ソーヴィニヨン種などを加えて造られる。生き生きとしたルビー色で、濃密なスミレの香りやブドウの果実の香りを含み、滑らかで調和の取れた辛口赤ワインになる。良い年のワインは長期の熟成にも向く。
「カルミニャーノ」は、キャンティが世に知られる以前からの古いワインで、フィレンツェが栄えた中世に盛んに飲まれた。1396年プラートの資産家・マルコ・タティーニが、他の地域の4倍もの価格でこの地を購入し、その名を世に知らしめた。その後、1716年、当時の支配者のメディチ家のコジモ3世がこの地を買い取っている。
イタリアでDOCの規定が作られた時、この地域の人々は、その歴史的由緒故、キャンティとの併合を拒んだため、DOCの認定が遅れ、認定されたのは1975年。また、キャンティがDOCGワインに昇格した時も、カベルネ・ソーヴィニヨン種を使用していたことから、DOCG昇格は認められず、1990年ようやく1988年産からDOCGに認められた。Rosso(赤)のみ。
しかし、そのキャンティが近年カベルネ・ソーヴィニヨン種を使用するようになったのは皮肉な話である。「カルミニャーノ」は、カペッツァーナやトレフィアーノ、アルティミーノ、ポッジョーロ、ヴェルゲレート、アンプラなど10の地区で知られている。
主生産者
Fat Ambra, Fat Artimino, Capezzana, Piaggia,
(ファットリア・アンブラ、ファットリア・アルティミーノ、カペッツアーナ、ピアッジア)
DOCGの認められたカルミニャーノのワインは、Rosso(赤)のみで、それ以外のロゼとヴィン・サントはDOC・カルミニャーノである。
19世紀中頃、モンタルチーノに住むクレメンテ・サンティとその一族がサンジョベーゼ種のクローネ(分枝系)からフルネッロ種を開発した。この地の石灰質で岩石分の多い土壌で、他の地のサンジヨベーゼ種に比べ色の濃い力強いワイン(フルネッロ種100%)を生み出した。しかし、その存在を世に知らしめたのは、古くはなく、1969年のモンテプルチヤーノ農業博覧会での金賞獲得からである。それが、「ブルネッロ・デイ・モンタノレデーノ」の出発点と言って言い過ぎではない。
「フルネッロ・ディ・モンタルチーノ」は、ピエモンテの「バローロ」・「バルパレスコ」同様、長期の熟成に耐え、濃いルピー色で熟成に従いガーネット色を帯びる。濃密で個性的な香りを持ち、やわらかくエレガントな味わいで人気を集めた。海外でも人気を呼んでいる。外国資本が多く入ったこともあり、この20年間に生産者数は倍増し、栽培面積も3倍近くになっている。
主生産者
ほぼ同じブルネッロの境界内で造られる以下の3つのDOCワインガある。
主生産者
Siro Pacenti, Col d'Orcia, Il Poggione, Talenti,
(シーロ・バチェンティ、コル・ドルチャ、イル・ポッジョーネ、タレンティ)
主生産者
Poderina, Col d'Orcia, Capanna, Il Poggione,
(ポデリーナ、コル・ドルチャ、カパンナ、イル・ポッジョーネ)
主生産者
Banfi, Col d'Orcia, Capanna, Caoarzo,
(バンフィ、コル・ドルチャ、カパンナ、カパルツォ)
モンテプルチャーノは、標高250~600mの丘陵地で、フィレンツェの南東に位置し、ウンブリアに近い。西にあるモンタルチーノよりも標高は高い。
古くからブドウが植えられていて、フィレンツェとシエナが争った中世に、ワインの生産量や販売などについて、既に詳しく定められていた資料が残されている。ローマ教皇にも納められていた銘酒の一つである。17世紀の詩人・フランチェスコ・レディの著書「バッコ・イン・トスカーナ」には、「モンテプルチャーノは全てのワインの王」と記されている。また、時代が下がって、フランスの作家・デュマの「モンテクリスト伯」の中にも、このワインが登場する。
こうした高貴なワインとしての扱いを受けたことから、その後、このワインに「ノビレ(高貴な)」という言葉が付け加えられるようになった。
19世紀初頭、コンドウツツィ、グッタレッリ、プチェッリなどのファミリーによって広められ、1920年代には、アダニ・ファネッティによってよく知られるようになった。
砂地を含む泥土質土壌で育つワインは、濃いルビー色で、繊細で上品なスミレの香りを含み、軽くタンニンを含む調和の取れた辛口になる。1966年にDOC、1983年に、最初のDOCGワインの一つに数えられた。
主生産者
Poderi Boscarelli, Canneto, Dei, Valdipiatta, Fassati, Poliziano, Fattoria del Cerro,
(ポデーリ・ボスカレッリ、カンネート、デイ、ヴァルディピアッタ、ファッサーティ、ポリツィアート、ファットリア・デル・チェッロ)
ほぼ同じモンテプルチャーノの境界内で造られる以下の3つのDOCワインガある。>
主生産者
Poderi Boscarelli(ポデーリ・ボスカレッリ)、Canneto(カンネート)、Poliziano (ポリツィアート)、Bindella(ピンデッラ)
サン・ジミニャーノは、「中世のマンハッタン」と呼ばれ、古い石塔が林立するその独特の魅力で人気の観光地である。
ローマと北方を結ぶ巡礼路と通商路のフランチジェーナ街道に面していたため中世に大きく発展した。当時の金持ちは、自分の力を示すために他人よりも、より高い塔を建てようと競ったのだと言う。
ヴェルナッチャ(Vernaccia)種で造るワインは、トスカーナを代表する辛口白ワインである。
ヴェルナッチャ種のイタリアでの原産地は、リグーリア地方の海岸沿いの村、ヴェルナッツァで、8世紀後半、ギリシャから運ばれてきた。サン・ジミニャーノには、1276年にこの品種が、それまで植えられていたグレコ種に変わって、植えられるようになったと言う記録が残されている。
1503年頃からアンジェロ・バルディによって広められ、今日の基礎が築かれた。
ダンテの「神曲」やボッカチオの「デカメロン」にも登場するこのワインは、メディチ家の婚礼の贈り物にも使われ、またローマ法王や貴族にも親しまれた。しかし、20世紀に入る頃まで、ほとんど忘れられた存在であったが、1966年にDOCに認められ、1993年DOCGとなる。
ワインは薄緑色を帯びた濃い麦藁色で、熟成にしたがい黄金色に近くなる。上品な花の香りを含む調和の取れた辛口で、後口にほろ苦さが残る特徴がある。
主生産者
Cappella Sant'Andrea, Il Palagio, La rampia di Fugnano, Palagetto, Strozzi,
(カッペラ・サンタンドレア、イル・パラジオ、ラ・ランピア・ディ・フニャーノ、パラジェット、ストロッツィ)
DOC:San Gimignano (サン・ジミニャ-ノ)
サン・ジミニャーノ周辺の丘陵地帯は白ワインの産地として名を馳せているが、赤ワインも造っていて、一部は、<キャンティ・コッリ・セネージ>に入るが、他の一部はこのDOCに入る。ロゼとヴィン・サントもある。
主生産者
トスカーナのDOCワインはピエモンテ同様数が多いので、3つに分けた。
産地は、フィレンツェ北東ポミーノ村(ルフィーナ地区の丘陵)。
サンジョヴェーゼ種主体で造る<Rosso>は飲み応えのあるしっかりした<赤>。
ポミーノ・ビアンコ種で造る<Bianco>は上品で快い<辛口白>。
この村の葡萄園の大半はフレスコバルディ家のもの。キャンティ地区の中にあって、この単独のDOCを名乗るのは当家のワイン造りに負うところが大きい。
主生産者
Frescobaldi, Fattoria Selvapiana,
(フレスコバルディ、ファットリア・セルヴァピアーナ)
主生産者
Del Teso, Fuso, Del Bounamico, Mazzini,
(デル・テーソ、フーゾ、デル・プォナミーコ、マッツィーニ)
ワインはサン・グイド農園の品種配合が基本とされていて、カベルネ・ソーヴィニヨン中心で、ヘクタール当たりのブドウの収量も少なく、オーク材の小樽で18~22ヶ月熟成される。ワインは、濃いルビー色で、力強く、30年もの熟成に耐える。
このDOCには、トレッビアーノ、ヴエルメンティーノ、ソーヴィニヨン種で造られる<白>もある。
「サッシカイア」は、マリオ・インチーザ・ロケッタ伯爵によって生み出された。ボルドーのロートシルト家から苗(カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フラン種)を譲り受け、サン・グイド農園に植えた。
そして、この苗から、1968年、3,000本の「サッシカイア」が生まれた。当時のイタリアワイン界の改革の潮流の中で、サッシカイアの成功は目覚しく、この地域はイタリア有数のワイン産地となった。
この他、この地域では、オルネッライア農園の「オルネッライア」や「マッセト(メルロー100%)」などの優れたワインが生み出されている。
主生産者
Ornellaia, San Gudo, Guardo al Tasso, Grattamacco,
(オルネッライア、サン・グイド、グアルド・アル・タッソ、グラッタマッコ)
主生産者
2011年、このDOCの中で2つがDOCGに昇格した。
主生産者
Spereta, Cecilia, Mola,
(スペレータ、チェチリア、モーラ)
2011年、< Aleatico(アレアーティコ種)>で造られるワインのみDOCGに昇格した。
表記は、 < Elba Aleatico Passito>
*Aleatico(アレアーティコ種)
果粒は、中程度の大きさの円形。果皮は中程度の厚さ。紫がかったガーネット色で、モスカートに似た繊細なアロマ香が特徴。豊かな果実実があり野生的な側面もある。古代ギリシャから運ばれた品種と言う説が多い。モスカート・ビアンンコと同類品種。
この伝統品種によるアルバ島での栽培は近年復活したものだが、偉大な個性を持つ甘口ワインと評価されている。
モンタルチーノとモンテプルチャーノの間のオルチア渓谷のDOC。オルチャ渓谷は田園風景の美しさで有名だが、その総てが葡萄栽培に最適ではない。サンジョヴェーセ種主体の<赤>とトレッピアーノ・トスカーノ種主体の<白>がある。共に、軽やかな若飲みタイプ。
主生産者
Podere Forte, Trequanda, Funari, Castello de Ripa d'Orcia,
(ポテーレ・フォルテ、トレクワンダ、フナーリ、カステッロ・ディ・リバ・ドルチャ)
主生産者
2011年、
表記は、